(11)PR(プルーフリライティング)ガイド−その他の整文(修文)
<整文(修文)の対象となる音の種類>
 通常のテープでは、大抵の話し手の声はよく聞こえて言葉をつかむことができるのですが、中には聞き取りにくい発音の話し手もいます。その原因としては 環境条件が悪いことが大きいのですが、話し手、環境、速記者(あるいは録音担当者)の三者にそれぞれ問題があります。

 話し手で発声・発語数育の訓練を受けた人はほとんどいないでしょう。一般には声が小さいことが聞こえに大きく影響しますが、発声器官に不良があったり、その人特有に持っている言語文化から、他人(外部)には分かりにくい発言が起こりやすいものと言えます。
 環境条件としては騒音が多いとか、会場が騒がしいということが聞こえ良さを損ないます。またリライターの側の原因として、「知らない言葉は聞こえない」というように、言葉をよく知らない人や知識がない場合にはどんなによく聞こえていても、その人は全然聞き取ることができないものです。

 音の面から見た整文(修文)処理の対象としては、
(1)聞き取れない音
    〜「****」を打って、聞こえない言葉の存在を示す
(2)なまり
    〜文章にして違和感のある場合、なまりを標準的なかたちに戻す
(3)方言
    〜方言の音のねじれは、文章語に戻す
(4)外国語
    〜外国語は原音に近い表記を行う
があります。
(1)聞き取れない音
 音声は話し手から離れるにつれて倍加的に聞き取りが難しくなります。リライターは、この場合、録音テープの文脈・アクセント等から見当をつけます。それでも分からないときには、次のような処理を行います。

A:「****」を打って分からない言葉があることを示す
B:(指示によっては)空白にする
C:前後の流れから重要でなさそうならば削除する
D:(長い時間にわたっている場合)「(反訳不能)」と入力する

 アスタリスク処理は、「****」のように四つと決められています。これは視覚的にも統一して「反訳不能個所」を示すためです。
(2)なまり
 俗語には言葉のかたちとなまりによるものとの2種類があります。文章にしたとき違和感が感じられるようなとき、なまりを標準的なかたちに直します。

<例文>
*ほんで、どうしたの。
<整文(修文)>
*それで、どうしたの。

<例文>
*メメズ
<整文(修文)>
*ミミズ

 一方で、「がめつい女といけ好かない男」のように、整文(修文)がむずかしい場合もありますので、この場合にはそのままにしておきます。
(3)方言
 方言の音を正確に表記する必要がある場合以外は意味を的確に伝えればよいから、方言音のねじれを標準形に直します。

<例文>
*オキャーマシェンシェイ
<整文(修文)>
*岡山先生

<例文>
*学校ちゅうんは何しるとこずら
<整文(修文)>
*学校というのは何するところか

<例文>
*そげんこつはいかんつう話じゃったけど
<整文(修文)>
*そんなことはいかんという話だったけど
(4)外国語
 欧米語を片仮名で音表記することはおのずから限界がありますが、日本語における音と異なることを示すために工夫された仮名を使うことが許容されています。

A:外国語は発音された原音に近い表記にする

<例文>
*ノレッジ
<整文(修文)>
*ナレッジ

B:適切と思われる字種を使う

<例文>
*ヴァーチャルリアリティー
<整文(修文)>
*バーチャルリアリティー
<整文(修文)の対象となる非言語情報>
 非言語情報というのは、声で表されない情報を言います。速記の場合に、臨席速記中に非言語手段を完全に書いておくことは困難ですが、録音テープやビデオ等で確認して必要な場合は記載するとよいでしょう。

 非言語手段による情報には次のようなものがあります。

(1) 間
    〜意味のある「間(ま)」は句読点、記号を使って表現する
(2)動作
    〜音声・物音から推測ででる場合を含めて必要な場合は補う
(3)表情
    〜音声や音などから推測されたり、「取材メモ」等に表記があれば、記載の必要があるときには書く

(1)間
 意味のある「間」は「点々」を使って表記します。

<整文(修文)>
a:いつ行きましたか。
b:・・・昭和62年ごろでした。
(2)動作
 話は、身振り手振りを伴って行われます。しかし、リライターは臨席速記者と異なりこれらを見ることができません。
 逐語記録では、例外的に「何々議員(登壇)」のような決まった例を除いて、動作は原則として筆記しないことになっています。
(3)表情
 表情も、臨席しないリライターには「無縁」のものですが、議会の逐語記録等では書きません。また講演記録でも書さません。座談会記録などでは例示のような「表情」に関する情報が記録されていることを知っておくにとどめます。

(例示)
(にやにやしながら)本当にね。
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