(11)PR(プルーフリライティング)ガイド−文章の構造と体裁から見た整文(修文)
 書かれた文を朗読する場合は、これを聞いて文字化することは比較的たやすいのですが、話し言葉を読んで分かりやすいように文字で表記することは意外に困難が伴います。そのために、リライターやプルーフリライターの統一表記のために、これまでにいろいろな処理技術が確立されてきました。
<整文(修文)の通則>
 文章の構造、もしくは文章の体裁という点から行われている整文(修文)の通則について説明します。この目的で行われている処理には次のようなものがあります。

(1)毛羽取り
    〜無機能語、しやべりぐせ言葉の除去
(2)切れ目なし文
    〜同じ接続詞の連用を避け、句読点を適当に施す
(3)倒置
    〜語、文節の並べ方の異常を直す
(4)言葉の欠落
    〜必要な言葉が省かれているのを補充する
(5)言いさし
    〜言いっ放しになっている場合、句読点などの記号を使って文脈の矛盾を解決する
(6)崩れ
    〜話し言葉の崩れたかたちを標準的なかたちにする
(7)繰り返し
    〜同じ言葉が頼出する場合、簡略にする
(8)重複
    〜同じ句や節が多用される場合、取り除く
(9)冗漫
    〜話し言葉特有のコプラ(繋辞)等を簡略にする
(1)毛羽取り
 本来の意味を失って文章を読みづらくし、内容の把握を妨げる言葉を「毛羽(けば)」と呼び、これらを構成する接続詞、副詞、 助詞、しやべりぐせ言葉等を取り除く作業を「毛羽取り」と言います。
 「もう」、「こう」、「やっぱり」、「やはり」、「で」、「えー」、「このー」、「そのー」、「うーん」、「あー」、「うー」など、「口癖」となっている無機能音・無意味音は、極力削除します。「えーと、なんだっけ」もなくてもいい場合は削除します。
あれですか、あれでしょう、あれですね、あれなんですね、何ですか、何でしょう、何というか、何といいましょうか、何かこう、どういうか、どういいましょうか、ええとですね
「 語尾」の処理については、文中の「ですね」、「ね」などは削除しますが、文章の末尾の「ですね」、「ね」などは、文章表現そのものの訂正をしなければならない場合は残します。ただし、不用に多く繰り返されるものは削除します。倒置文章などで、本来語尾に来るべき「ですね」や「ね」が途中にある場合には、意味が通じなくなってしまうことが多く、そのまま残します。ただし、削除可能な場合には削除します。

<例文>
*ははあ、まあ、それはですね、私はですね、ないと思います。
<整文(修文)>
*それはないと私は思います。

 口語で頻度高く使用される以下のような「ちょっと」も積極的に削除して文章をシンプルにします。
*資料をちょっと見ていただきますが
*細かな計画というものがちょっとできるかどうかというのが
*ちょっと今日の説明を聞いていて
*この中でちょっと2点ほど分からない
*ちょっとここら辺で少し問題が残る
*これもちょっと不勉強で
*ちょっとそこら辺の表現が分からない
などの場合、「ちょっと」を削除します。

 「ちょっとの時間」のように「ちょっと」が意味を持って必要な場合もありますので注意してください。

[無機能化した癖言葉の例]
 一般的には以下のようなものが指摘されています。実際の整文(修文)においては、プルーフリライターの判断によって適切な処理が施されます。
何か、なんか、何といいますか、やっばり、やっぱ、やはり、あまり、あんまり、〜と。ですよ、〜はだな、だから、ちょっと、例えば、ところが、ところで、 それから、それで、すると、で、ただし、いろいろ、いろんな、なんかこう、ですな、実を言うと、実はですね、ま、つまり、まあ、あのう、みたい、そのお、本当に、ほんと、こう、もう、やあ、絶対に、全部、全く、全然、非常に、結局、とっても、とても、すごく、めちゃ、かえって、ずばり、どんぴしゃ、とにかく、ともかく、割と、割かし、割合、わけ、要するに、一応、一定、いわゆる、ははあ、逆に言えば、〜かもね、〜と思います.〜のようです。けど、けれども、けども、〜が、さあ、〜し、私は、すごい、すっごく、すると、そして、そりゃあ、たしか、何ていうか、はっきり言って、一つの〜、僕、もう
 若い人に多いと言われる「母音の引き伸ばし」も表記しません。

<例文>
*私もォー、今回はァー、お金がァー、なくてェー
<整文(修文)>
*私も、今回はお金がなくて
(2)切れ目なし文
 話し言葉では句点の場所を言葉では宣言しません。それとは別に、文を止めないで延々と続けていく話し方があります。
 同じ接続助詞が2個続くと体裁が悪いので、適当に文を止めます。そのとき、接続詞が必要ならば自然な流れになるように加えます。

<例文>
*〜が、〜が、〜が、〜が、
<整文(修文)>
*〜が、〜です。しかし、〜が、〜です。
<例文>
*〜し、〜し、〜し、〜し、
<整文(修文)>
*〜し、〜です。また、〜し、〜です。
(3)倒置
 日本語では言葉の並べ方の規則は緩やかです。話が乱れて言葉の順番が狂った場合、すんなり読め、意味がつかめるように語順を戻します。

<例文>
*これまでにもあったと思うんですよ、いろいろと。
<整文(修文)>
*これまでにもいろいろとあったと思うんですよ。

<例文>
*承知しているんですね、じゅうぶん、大統領は。
<整文(修文)>
*じゅうぶん承知しているんですね、大統領は。
(あるいは)
*大統領はじゅうぶん承知しているんですね。

<例文>
*駄目なんです、今のところ、これは、どうしても。
<整文(修文)>
*今のところ、これはどうしても駄目なんです。

<例文>
*本日は、お二人の臨床の第一線で活躍しておられる先生方を
<整文(修文)>
*本日は、臨床の第一線で活躍しておられるお二人の先生方を

<例文>
*政府においては、細かい、ほとんど連日徹夜のような状態で細かい分析が行われている
<整文(修文)>
*政府においては、現在ほとんど連日、徹夜のような状態で細かい分析が行われている
(4)言葉の欠落
 日本語の話は、話し手と聞き手の間で了解されている情報は省いて話されることが多いものです.また、話し言葉では 助詞が省略されたりします。また言葉に付属する音声属性、例えばアクセント(強弱、高低)、リズム、イントネーション(抑揚)、プロミネンス(強調)などの情報は文字にできないので、それを補充する必要があります。助詞などはあるべきものを補完してやります。


<例文>
*私、本、読む。
<整文(修文)>
*私は本を読む。

<例文>
*食べます(尻上がりの抑揚)
<整文(修文)>
*食べますか。
(あるいは)
*食べます?

<例文>
*どこにあります。
<整文(修文)>
*どこにありますか。

<例文>
*そうじゃない。私はそう思うんです。
<整文(修文)>
*そうじゃないですか。私はそう思うんです。

<例文>
*そこへ私来たんですが
<整文(修文)>
*そこへ私が来たんですが
(必要ならば)
*そこへ私が来たのですが

<例文>
*余分なこと書いてあっても、まあいいやとあなた方言っていますが、
<整文(修文)>
*余分なことを書いてあっても、まあいいやとあなた方は言っていますが、

<例文>
*昨日私頼んだ件、記憶ございますか。
<整文(修文)>
*昨日私が頼んだ件、記憶ございますか。

<例文>
*先日、中国へ行って
<整文(修文)>
*先日、中国地方へ行って(国内の場合)

<例文>
*月曜日から水曜まで
<整文(修文)>
*月曜日から水曜日まで

<例文>
*国が3割、県が20パーセント、残りの5割は市の負担です。
<整文(修文)>
*国が3割、県が2割、残りの5割は市の負担です。
(5)言いさし
 話し言葉は柏手の発言に影響されたり、考えながら作られることが多いものです。そのため、話の組み立てが途中で変更されることがよく起こります。ときによっては、話を完結しないで終わることを、「言いさし」と呼びます。「言いさし」に終わっていることを記号によって示す作業が必要になってきます。
 言いさして、尻切れとんぽになっている場合、欠けている言葉を補う方法があります。またダッシユ記号を使って、あとの文とは切れていることを示すことがされますが、「JRGA標準」ではダッシュの代わりに、点々で句読点を打つ整文(修文)の方法を採ります。

<例文>
*いろいろ問題があると第一は
<整文(修文)>
*いろいろ問題があります。第一は
(あるいは)
*いろいろ問題があると・・・。第一は
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