続き・・・(6)崩れ |
文字として書いた場合、不自然に感じる表記はなじみやすい表記にする必要があります。また言葉を換えたり、表現を変更してやることもときによって必要になります。特に、この整文(修文)は逐語記録以外の場合に行います。 <例文> *〜しちゃった。 <整文(修文)> *〜した. <例文> *行かなきゃなんない。 <整文(修文)> *行かなければならない。 A:どこか→どっか、かつて→かって、そこから→そっから、あそこ→あっこ、どこかに→どっかに B:大きい→おっきい、小さい→ちっちゃい C:取り払う→取っ払う、取りはずす→取っぱずす、吹き飛ぶ→吹っ飛ぶ、 寄り掛かる→寄っ掛かる D:ものすごく→ものすごう、高く→高う、長く→長う、よろしく→よろしゅう、うれしく→うれしゅう、楽しく→楽しゅう、使って→使うて、食って→食うて、思って→思うて、違って→違うて、 E:という→ていう、という→っていう F:それでは→それじゃ、私は→わたしゃ、なくては→なくちゃ、 G:ばかり→ばかし、まるっきり→まるっきし、あまり→あまし、ぴったり→ぴったし、やっぱり→やっぱし、同じ→同し 音が脱落するものとして: H:だろう→だろ、やろう→やろ、でしょう→でしょ、本当(ほんとう)→ほんと、ちょっと→ちょと、ちっと→ちと I:ばっかり→ばっか、してるんです→してんです、ところ→とこ、けれども→けども、 音が付加するものとして: J:あまり→あんまり、同じ→おんなじ K:ばかり→ばっかり、やはり→やっぱり、まるきり→まるっきり、なくて→なくって、なくても→なくっても、余程→よっぽど、とても→とっても、裏側→うらっかわ、北側→きたっかわ、片端→かたっぱし L:じゃ→じゃあ、ずっと→ずうっと、そっと→そうっと、じっと→じいっと 崩れた言葉の処理は大変に難しいもので、決まり切った処理方法ではかえって問題になってしまいます。 「できているんですか」を「できているのですか」と整文(修文)すると、文章全体に違和感が残ることがあります。「・・・んです」、「・・・なんです」、「・・・んでは」については、会議でのやり取り、自由な雰囲気の座談会での意見交換、くだけた対談など、その場面場面に適切な整文(修文)を行います。 <例文> *そのようにやってるんですね。 <整文(修文)> *そのようにやっているんですね。 (必要があれば) *そのようにやっているのですね。 <例文> *駄目なんです。 <整文(修文)> *(必要があれば)駄目なのです。 <例文> *どのような処理をしてますか。 <整文(修文)> *どのような処理をしていますか。 <例文> *そういうふうにやっとくことで、 <整文(修文)> *そういうふうにやっておくことで、 |
(7)繰り返し |
話し言葉の中で同じ言葉や表現が頻繁に行われることを「繰り返し」と呼び、このような繰り返しは不快感を与えるので、適当に間引いたり、言葉を置き換えます。これも、逐語記録以外の場合に行います。 <例文> *また〜。また〜.また〜。また〜。 <整文(修文)> *また〜。〜.〜。〜。 <例文> *大体、金額にして大体どのくらいですか。 <整文(修文)> *金額にして大体どのくらいですか。 <例文> *経済の成長率は年に3パーセント成長している。 <整文(修文)> *経済は年に3パーセント成長している。 <例文> *非常に高い価格だから、税金の減税の対象にならない。 <整文(修文)> *非常に高い価格だから、減税の対象にならない。 <例文> *これは私の私見なのですが、 <整文(修文)> *これは私見ですが、 <例文> *収入が入りました。 <整文(修文)> *収入がありました。 <例文> *5年間の間、ずっと検討を続けてきた。 <整文(修文)> *5年間、ずっと検討を続けてきた。 <例文> *私は、そういう持論を持っています。 <整文(修文)> *私は、そういう持論であります。 <例文> *明らかに条文に明記しておく。 <整文(修文)> *条文に明記しておく。 <例文> *適切な措置を講ずると言われましたけれども、この具体的な中身ですけれども、前段の質疑と関連してきますけれども、どうお考えでしょうか。 <整文(修文)> *適切な措置を講ずると言われました。この具体的な中身ですけれども、前段の質疑と関連してきますが、どうお考えでしょうか。 <例文> *できるだけやりたいという、そういうお答えでした。 <整文(修文)> *できるだけやりたいというお答えでした。 (あるいは) *できるだけやりたい、そういうお答えでした。 <例文> *関係者の意向はどういう意向を持っているのか。 <整文(修文)> *関係者はどういう意向を持っているのか。 <例文> *工場の設備ですね、設備についても考える必要があります。 <整文(修文)> *工場の設備についても考える必要があります。 <例文> *約5万円ぐらい <整文(修文)> *約5万円 (あるいは) *5万円ぐらい |
(8)重複 |
話の中で同じ趣旨の発言が2度以上繰り返して行われることを「重複」と呼び、
話の流れを損なわない限りにおいてどちらかを簡単にするか、省きます。 また相手の話をおうむ返しにダブらせて言いながら話を継いでいく話法の場合、要らないと思われるほうを省きます。 <例文> *私は、それは全く同感できると、私は思っております。 <整文(修文)> *私は、それは全く同感できると思っております。 (あるいは) *それは全く同感できると、私は思っております。 <例文> *日本経済は、現在長い不況で低迷を続けている日本経済ですが <整文(修文)> *日本経済は、現在長い不況で低迷を続けていますが (あるいは) *現在長い不況で低迷を続けている日本経済ですが <例文> *これは非常に、現実的にはかなり困難な問題です。 <整文(修文)> *これは、現実的にはかなり困難な問題です。 最後の例文は、「これは、現実的には非常にかなり困難な問題です」とは整文(修文)しません。 <例文> a:そうしますと、ですね、明治15年とおっしゃいましたね、先程。 b:始まったのが明治15年で・・・。 a:明治15年でしょう。 b:明治23年にもう逐語記録として・・・。 a:たった8年。 b:たった8年で。 <整文(修文)> a:そうしますと、先程明治15年とおっしゃいましたね。 b:始まったのが明治15年で、明治23年にもう逐語記録として・・・。 a:たった8年。 また、副詞や助詞などの重複についても以下のように整文(修文)します。 <例文> *人口がどんどんどんどん増えていきまして、 <整文(修文)> *人口がどんどん増えてきまして、 同様に、「だんだんだんだん」、「てくてくてくてく」、「すらすらすらすら」、「じゃんじゃんじゃんじゃん」、「ぽんぽんぽんぽん」なども、特別の強調が必要な場合以外は二つの繰り返しとします。 <例文> *この点をお伺いをしたい。 <整文(修文)> *この点をお伺いしたい。 <例文> *先程いらっしゃられました。 <整文(修文)> *先程いらっしゃいました。 <例文> *今おいでになられました。 <整文(修文)> *今おいでになりました。 <例文> *コロンビア大学を卒業されておられます。 <整文(修文)> *コロンビア大学を卒業されております。 (あるいは) *コロンビア大学を卒業しておられます。 |
いにしえの 昔の 武士のさむらいが 木曽山中の やまなかで 馬から落ちて 落馬して 女の婦人に 笑われて 腹を切って 切腹した |
{一般的に社会になじんでいる内容重複語} |
経過を経て、二度と再び、被害を受けた、採算が取れる、一番最初に、 まず最初に、今現在、便利がいい、湯を沸かす、成人になる |
{違和感の強い重複語} |
先般来から、従来から、従来より、古来から、陳述を述べる、3年間の間、 受注を受ける、必ず必要、食事を食べる、今の現況、いまだ未定、まだ未定、 大体内定、加工を加える、引き続き続行する、毎定例会ごとに、電球の球、 これからの将来 |
(9)冗漫 |
話し言葉特有のコプラは、言葉と言葉をつなぐ潤滑油のような役割を持っています。しかし、文字化したとさに長たらしくなります。要領よく話の要旨をつかむうえで妨げになるので、簡潔な表現に変える必要があります。 ただ逐語記録、筆言をありのままに書き留める全文型の記録では冗漫な文章でも処理を加えてはいけません。一般的には、冗漫な言葉・表現を簡潔にする処理は、講演・座談会などで行います。 |
<冗漫の例示> |
誠にもっともなお話でございまして、私と致しましては、そういうふうな考え方もございますことはじゅうぶんに承知しているわけでございまして、いずれに致しましても、私どものほうと致しましては、このような問題につきましては、更に検討致しまして、じゅうぶん前向きなかたちで対処致しまして、そのうえで何とか方法を講じるように考えたいと思っているわけでございまして、現在の施策は十分でないかもしれませんけれども、ひたすら努力を致しまして更なる方策を考えていきたいと考えておるわけでございまして・・・ |
<例文> *そこに問題があるというふうなことにつきまして <整文(修文)> *そこに問題があることについて <例文> *そういうことではないかという、そういうようなことが <整文(修文)> *そういうことではないということが <例文> *財政破綻というようなことにつきましては <整文(修文)> *財政破綻ということについては、 (あるいは) *財政破綻については |
★「なん」あるいは「なんて」 |
次のような「なん」あるいは「なんて」は削除するか訂正します。 *「横浜市なんですけれど」ではなく「横浜市ですけれど」 *「そういう段階なんです」ではなく「そういう段階です」 *「協議地区なんていう」ではなく「協議地区という」 *「10ページなんかもそうです」ではなく「10ページもそうです」 *「第1点目なんですが」ではなく「第1点目ですが」 *「今回の災害なんかを見ましても」ではなく「今回の災害を見ましても」 *「議論が変なふうになるなんていうのは」ではなく「議論が変なふうになるというのは」 *「マスタープランなんていう言葉が出てくる」ではなく「マスタープランという言葉が出てくる」 *「賛成なんですけれども」ではなく「賛成ですけれども」 *「環境保全なんかを条例で決める」ではなく「環境保全を条例で決める」 |
★「ような」、「という」あるいは「というふうな」、「というような」 |
次のような場合、簡潔な文章にするために削除をします。 *「持っていきやすいというようなかたち」ではなく「持っていきやすいかたち」 *「取り上げなくてもいいではないかというようなご意見」ではなく「取り上げなくてもいいではないかというご意見」 *「検討していくという中で」ではなく「検討していく中で」 *「どうしようかなというふうに悩んでいる」ではなく「どうしようか悩んでいる」 *「ふさわしくないかなというふうには思っております」ではなく「ふさわしくないと思っております」 *「考えられるのではないかというふうには思っております」ではなく「考えられるのではないかと思っております」 *「多いというふうに思って」ではなく「多いと思って」 *「アカウンタビリティーというふうに言ってしまう」ではなく「アカウンタビリティーと言ってしまう」 *「状況になっているというような考え」ではなく「状況になっているという考え」 |
冗漫区の取り扱いは難しいところがあります。特に繰り返して用いられることで煩わしい文章表現になりますので、必要に応じて丁寧形を通常形に簡約化します。 <例文> *・・・につきまして <整文(修文)> *・・・について <例文> *・・・に関しまして <整文(修文)> *・・・に関して <例文> *・・・と致しまして <整文(修文)> *・・・としては <例文> *・・・というような <整文(修文)> *・・・という <例文> *・・・と思っておりますわけでございます <整文(修文)> *・・・と思っております (あるいは) *・・・と思っているわけでございます |
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