(11)PR(プルーフリライティング)ガイド−文章の形式・表記から見た整文(修文)
(1)用字用例
 改訂「JRGA標準」に定められた表記について整文(修文)を行います。「おこしれん」では、日本リライトグラフィー協会の「JRGA標準」による統一表記によって用字用例を定めています。
 文章の中核となる表記問題は、プルーフリライターにとって最も重要視して取り掛かるべきものと言えます。

 1999年10月1日実施の改訂「JRGA標準」によって、従来「読み仮名表記」をした表外字漢字熟語が大幅に「読み仮名併記」不要となっています。日ごろから頻度高く使用する漢字熟語は、そのまま漢字表記をするようになって、文章は視覚的にもシンプルで簡潔に表記することができるようになりました。
(2)句読点
 反訳技能の基本となるのが、文章の形式を整える力ですが、改訂「JRGA標準」に次いで基礎的要素となっているのが句読点です。句読点には、
* 句点
* 読点
* 中点
* ピリオド
* コンマ
があります。「ピリオド」は、インターネットのアドレスでは「ドット」と呼ばれることもあります。
 反訳文章では、統一表記・標準化を図るために、句読点の使い方に一貫性を持たせる必要があります。
◎句点{。(まる)」
 一つの文章が完了したときに打ちます。文章になった箇条書きでは項目の終わりに打ちますが、文章のかたちを採らない場合は打たないことが多くなっています。

<用例>
*私は思う。
*これは違法ではない、こう当局は言ってきた。
*内容は何か、これを明確にしていただきたい。

 句点を打つ場合、「文章の終わり」にふさわしい表現であることが必要です。話者の話が途中になっていて、そのまま句点を打つと、文章として未完成のままになり印象が良くありません。
◎読点「、(てん)」
 読みやすく分かりやすい文章とするために、適切な読点を打ちます。整文(修文)で最も重要でしかも困難な作業が「読点」処理と言えます。最終的にはセンスの問題になってしまいますが、その前に、「分かりやすく意味を伝えることのできる読点」を打つことが先決でしょう。
 主語を明確にすること、句や節をはっきりさせることに留意します。また、接続詞や副詞にも配慮します。「従って」「しかし」「ところが」「そうすると」「例えば」などについては省略しないで、できるだけ「読点」を打つようにします。「読点」を打たないと、文章の真意を考えないようになってしまいます。特に、倒置した文章では、読点は絶対に必要になります。

 「おこしれん」では、標準設定を「1行35文字」としてありますが、この設定文章で、「句読点」が全くない文章が「2行以上」になると、文章は「視覚的にも読みにくい文章」になります。一方、文章自体は、なるべく「流れるように読ませる」ために「無用な句読点」を省くことも考慮しなければならないことにもなり、バランス感覚が重要になってきます。

 読点の打ち方のポイントは、
@ 切れ目に打て
A 読みやすいように打て
B 主語、主題のあとに打て
C 並列の語句の間に打て
D 条件、結果を表す助詞のあとに打て
E 文中の柊止形に打て
F 接続詞のあとに打て
G 日時、場所、方法などを表す語句のあとに打て
H 感動詞、呼びかけの語句のあとに打て
I 倒置文のあとに打て
J 息切れで打て
などが一般的に指摘されているものです。

<用例>
*今年は、雨が多い。
*美しい、水車小屋の娘。
*美しい水車小屋の娘
*母は、楽しげに遊んでいるわが子をながめていた。
*母は楽しげに、遊んでいるわが子をながめていた。
*昨日、僕はアメリカから帰った友人 に会った。
*僕は、昨日アメリカから帰った友人 に会った。


 読点の実践応用で、短文の場合には、基本原則を適用しないで、より読みやすいことに力点を置いて読点を打ちます。上記応用例の「今年は、雨が多い。」は、実際には「今年は雨が多い。」とします。

A 「主語」の明確化
 「主語」を明確にするために「読点」を打ちます。「私は、」や「その案件は、」といった短い主語に打つ読点は、文章全体の長さから適切な判断をして打ちます。「日本の職人の特徴というのは、」あるいは「何でもかんでもうちの設計をやっているやつなんていうのは、」など、長い主語の場合には、必ず読点が必要になります。

B 「接続詞」・「接続句」の明確化
 「とういうことは」、「その後」、「結果として」、「要するに」、「基本的には」、「その代わり」、「それから」、「ちなみに」、「時に」、「特に」などなど。前の文章あるいは前の文節との関係を明らかにするために、「読点」を明確にします。この場合も、あとに続く文章が極めて短い場合には、基本原則よりも読みやすさを優先して、読点を省きます。

C 「副詞」・「副詞句」の明確化
 「どちらかというと」、「正直に言うと」、「一般的には」などなど、文章の間に挿入される副詞句は、「読点」を打ってアクセントを付けます。
例示すると、
*「そうすると、結果としては、」
*「特に、建築そのものもそうですけど、設備的な問題というのは、」
*「というのが、今、価格で勝負する・・」
*「だから、いいかげんにちょこちょこやって、その代わりこの材料を全部使ってください・・」
*「だから、どちらかといいますと、そういう発想になっていくと思う」
*「日本の職人の特徴というのは、極端に言えば、」
などとなります。

 実際には、倒置(後述)や文脈の乱れ(後述)を考慮して整文(修文)し、発言通りではなく、より読みやすい文章に直します。

D 「てにをは」省略文章
 本来、「私、会社、入りました」だが、「私、会社に入りました」あるいは「私は、会社に入りました。」に。本来、「売り上げ、1億、目標にしています」だが、「売り上げ1億、目標にしています」あるいは「売り上げ1億を目標にしています。」に。「今、私、経営計画を説明します」は「今、私が経営計画を説明します。」とします。

E 倒置文章
 「倒置」については後述しますが、ここでは読点を打つことからの視点で、以下の例示を参照してください。

*「行きます、私。」
*「ご説明しましょう、これを。」
*「どうでしょうか、私。」


■語順の訂正

 文語表現では、主語、述語などの語順が分かりやすくなっていますが、口語表現では、これが倒置されて、そのままだと読点が多くなってしまう表現になります。リライトグラフィーでは、読点を少なくして読みやすい文章にするために、文語表現に近付ける語順の訂正をしていますが、この作業は、単純なレベルにとどめておきます。複雑な作業は、勢い文章の意味そのものを変えてしまうことにつながります。

 「おこしれん」としては、リライターの「標準化」に力点を置いています。一つのプロジェクトを担当する複数のリライター、複数のプルーフリライターが同じレベルで表記し校正するレベルを均一にすることが狙いです。この標準化のため、「見えない」ほかのリライターの反訳を推測しながら校正することが必要になります。
 当然、行き過ぎた反訳はコントロールする必要があります。「大体」、「非常に」、「今」その他、分かりやすい言葉や、「ある意味では」、「先程言ったように」などの分かりやすいフレーズに限定して直します。
 なお、発言通りだと何を言っているのか分からないテープ内容や反訳文章に出会いますが、思い切って「大きく直す」ようにしてください。この場合にも、リライターにとっての分かりやすさがポイントになります。

F 「あるいは」、「それから」などの取り扱いについては、あくまでも「基本」事項として以下を参照してください。
 「東京、あるいは、大阪」ではなく「東京あるいは大阪」(読点を打たない)、「日本の首都としての東京、あるいは、文化の首都としての大阪」ではなく「日本の首都としての東京、あるいは文化の首都としての大阪」(読点は前のみ打ちます)、「日本における一極集中問題の争点になっている東京、あるいは、21世紀の日本の繁栄に新たな期待が寄せられている大坂」はそのまま(読点を前後に打ちます)です。

G 「けっこう」や「本当に」、「ごく」は以下のように処理します。
 「けっこう、面白かった」ではなく「けっこう面白かった」、「けっこう、昨日のニュース番組は面白かった」はそのまま。
 「本当に、正しいと思ったことを言うべきだ」ではなく「本当に正しいと思ったことを言うべきだ」。「本当に、彼の考えは知らないけれど、正しいと思ったことを言うべきだ」はそのまま。「本当に、彼としては正しいと思ったことを言うべきだ」はそのまま。
 「ごく、親しい友人」ではなく「ごく親しい友人」、「ごく、最近、話題になったことですが」ではなく「ごく最近話題になったことですが」あるいは「ごく最近、話題になったことですが」とします。
◎中点「・」(なかてん、中黒、なかポツ)
 横書きの場合、区間表示及び体言の列記のほか、縦書さでは体言の並列、外来語、外国人名、数詞などの区切り、小数点に使います。
使うポイントは、片仮名語の区切り、言葉が同格の場合、年月日の省略といった場合です。
 
<用例>
*サケ・マス漁業
*アジア・大洋州地域
*ビル・クリントン
*二・二六事件
*2・3・5の割合
*二十五・三パーセント
*東京・大阪を走る新幹線
*パリ・ダカール間のレース
◎ピリオド「.」
 ピリオドは、横書きで、小数点を示す場合や省略符号を表すときに打ちます。一部の学術文書では、ピリオドを句点の代わりに用いますが、「JRGA標準」ではこれを採用していません。

<用例>
*U.S.A. 
*100.5 
◎コンマ「,」
 数字を表記する際に用います。

<用例>
1,500円
(3)記号類
 記号類には、
*1文字ダッシュ
*波線
*2文字ダッシュ
*点々
*括弧
*踊り字
*傍線・傍点
などがあります。
◎1文字ダッシュ「−」(マイナス記号)と波戦「〜」
 1文字ダッシュは、一般的には時間・期間、数量等について「何々から何々まで」の意味で使われます。「JRGA標準」では、「標準化」を最優先課題にしているところから、リライターあるいはプルーフリライターによって異なる表記になりがちな記号類の取り扱いについては、標準化が図れるように必要最小限にとどめるように指導しています。
 ちなみに区間表記は「中点(・)」で、「東京・大阪間」のように表記します。

 反訳原稿においては、「名前の分からない発言者」を示す場合に、「−−」のように1文字ダッシュを二つを表記しますので、結果として、この記号は最も多く使用される記号になっています。

 時間幅や数量幅については、「9時〜5時で働く」、「400〜500キロのスピードで」のように表記します。

 この「1文字ダッシュ」は、「ハイフン」と混同してよく「ハイフン」と呼ばれていますが、同じものであれば問題ありません。
 ちなみに、「ハイフン」は、英語などで、語と語をつなぐとき、また、1語が2行にわたる際に語の要素の区切りにつけて1語であることを示すときなどに用いる短い横線の符号です(「heart-to-heart」など)。
◎2文字ダッシュ「――」(ながぼう)
 2文字ダッシュは、発言の間合いを表したり、語句の説明、言葉の中断、言い換え、話線の変更を表すときに使います。一般的に使うポイントは、話の流れが急に変わったとき、説明に入ったところ、挿入句、尻切れとんぼのところ、話者の変更のところに打ちます。

<用例>
*事故――事故といっても、いろいろあるが、
*それは――それよりも、私はこっちのほうを、
*次の表を――。第1項目を、
 この2文字ダッシュについても、特別の場合を除いて、「JRGA標準」では表記しません。
◎点々「・・・」
 点々は、語尾をぼかしたり、略して完全に言い切らなかった場合、言葉が途中でさえぎられた場合などに使います。

<用例>
*それはちょっと・・・。
*皆さん、何か・・・。
*それは予算の・・・(「どうしたんだ」 と呼ぶ声あり)いいえ申し訳ございません。
   〜最後の用例のように「情景」については、「JRGA標準」では表記しません。

 会話の最初と最後がはっきり録音されている場合には問題ありませんが、通常のテープ録音では、「A面の終わり」及び「B面の始め」は会話の途中になっています。
 この場合には、「点々」を必ず打って、話の途中であることを明記します。
◎かぎ括弧(「 」)
 かぎ括弧は、一般には、語句または文の引用、固有名詞、文書の表題、ことわざ、成句などで、特に必要のあるときに使います。
 一般に使用される「二重括弧」はファイルコンバート上問題があり、かぎ括弧の中で二重括弧は使いません。
 また、長文の引用の場合は、かぎ括弧を使わないで、全文を1文字下げたレイアウトをする場合がありますが、「JRGA標準」ではこの表記方法を採りません。
◎丸括弧「( )」
 丸括弧は、拍手のほか、特珠な注釈的語句の表示に使います。また、「片括弧」についても用例にあるように表記します。

<用例>
*(1)、(2)について説明します。(括弧1、括弧2について・・・)
*1)について説明します。(片括弧1について・・・)
*(拍手)
*(笑い)
*(A面終了)
*(反訳不要個所)
◎踊り字「々」
 踊り字は、漢字1字の繰り返しに使います。なお、繰り返しが2文字以上になる場合には繰り返し記号は使いません。ワープロでは「どう」で変換されることが多いようです。複合語や略語にしたときの頭文字として繰り返されるときなどには「々」は使いません。
四字熟語の場合にも踊り字表記します。

<用例>
国々、人々、子々孫々
【例外】民主主義、電電公社、北北東、九九
◎傍線、傍点(アンダーライン、下点)
 傍線や傍点は、「JRGA標準」では使いません。一般には、付ける位置は横書きでは語句の下に下線を付け、傍点は語句の上に打ちます。
◎ふりがな(ルビ)
 「JRGA標準」では、ふりがなを表記しません。
4.段落
 一つないしはそれ以上の要点から要旨は構成されますが、一つの要旨を単位に段落を付けると読み手が理解しやすくなります。段落は次のような場合に付けます。

 イ.話のまとまりが終わると改行します。
 ロ.話し手が変わると改行します。
 ハ.1段落の量が大きい場合、適当に改行します。

 適切な段落の設定について、標準書式では、5行から10行が一つの目安になります。もちろん、これよりも短い場合が多々あります。リライターの反訳文章は、「段落設定は最後にやろう」という思いからか、どうしても段落が長く設定されがちです。
 また、講演その他でだらだらと文章が続く場合には、思い切って「句点」を打って、文章を完結させてでも段落設定をします。段落は、読みやすい文章の基本となります。

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